J Magazine June 2022
日頃より当クラブをご愛顧いただきありがとうございます。
J STRUCTの伊藤です。
当クラブの会員様をはじめ、体験者様、ビジター様など関わる全ての方々に向けて、テニスにおける「なるほど!」という情報を、月に一度お届けしておりますが、今月は少々テイストを変えまして「勝ち続けることの難しさ」について、私の体験談を踏まえてお話させていただきます。
先日行われた全仏オープンではナダル選手とシフィオンテク選手が偉業を達成しましたが、彼らがどれだけ凄いことをやっているのか全てを理解することは私にはできません。
しかしながら、世の中の「王者」と呼ばれる選手達にどれほどの苦労があり、どのようにそれを乗り越えているのかに思いを馳せ、グランドスラムやオリンピックなど様々な大舞台での勝利の場面を皆さんがテレビで見た時に、少しでも感動の幅が広がればいいなと思います。
①プレッシャーについて
プレッシャーは当然のように選手本人に重くのしかかります。
皆さんもご存知のように、真剣勝負の世界において、勝つことはそんなに簡単なことではありません。
例えそれが一回戦だったとしてもです。
もちろんそれは王者にとっても同じことなのですが、本人の心理としては「一回戦は圧勝しないとおかしい」「優勝して当たり前」と周囲から思われている気がしてなりません。
怖いのは、プレッシャーが勝敗だけに留まらず「スコア」や「プレーの内容」にまで及ぶということです。
例えばもともとのプレースタイルがとにかく粘り強くラリーをしてコツコツとポイントを稼ぐタイプの選手でも、王者としてコートに立った途端に自分のプレースタイルを見失い、リスクの高いショットで相手を圧倒しようとして自滅するということはよくあるパターンです。
もちろんトッププロにおいては、その道のスペシャリストですのでそのような失敗も沢山重ねてきて、基本的にはいかなる場面でも自分を見失うことなく戦うことができるメンタルを持ち合わせていますが、それでもなお大きな大会になればなるほど観客は多く、「ボールをつく音」や「自分の呼吸」が静まり返った大観衆のスタジアムの中で聞こえ、自分の一挙手一投足に注目が集まっていると意識した瞬間、真っ直ぐ歩くことさえままならなくなるものです。
②観客は王者が苦しむ姿を見たがっている
確かに、王者として君臨している選手が圧勝で勝つ試合を観客として見るのはあまり面白くないかもしれません。
しかし、本人としては面白くなくていいのです。
相手がとてもいいプレーをしてきて大接戦になり、尚且つ中立的なはずの観客までもがこの現状を喜んでいると感じた瞬間、本人はとてつもない孤独感に襲われます。
ですので、トッププロが苦しい場面で観客席の自陣いるコーチや家族を見つめるのは、どんな時でも自分の仲間として励ましてくれる心の支えに頼っているのだと思います。
③現状維持ではダメ
勝ち続ければ勝ち続けるほど、周囲の選手達はその選手の弱点や得意とするポイントパターンをとことん研究・対策をして、何度でも挑んできます。
ですので王者は、決して現状維持では勝ち続けることができません。
自分の弱点を的確に狙われ、接戦になってしまう試合も当然多くなってくるので、弱点の克服が必要不可欠です。
また、自分が得意とするポイントターンも相手に読まれ、簡単に決まらなくなってきますので、得意パターンに磨きをかけたり、ポイントパターンを増やしたりしなくてはなりません。
それらのことを簡単にできたらよいのですが、やはり新しいことにチャレンジすると最初はミスが出てしまいますので相当な練習を積む必要があります。
更には、練習ではうまくできるようになっても、実戦でできるほどの技術が身についているかは、試合で試してみなくてはわかりません。
もし、試合でまだミスが出てしまう場合に、もともとのプレーに戻して目先の勝利を優先すべきか、もしくはミスを出しながらも新しいプレーに挑戦し続け、生まれ変わった自分を目指すのか、とても悩ましいところです。
仮にそこで挑戦することを止め、もともとのプレーに戻してしまった場合は、これからも同じことに悩まされるのは言うまでもありません。
ですので、王者は常に勝利と自分の成長を両立させながら戦い続ける必要があるのです。
上記のようなことだけに留まらず、他にもありとあらゆる障害物が目の前に現れ、それを幾度となく乗り越えながら「勝ち続けている」と思うと、彼らの勝利には本当に感慨深いものがありますよね。
更には年齢を重ねるにつれ体力的な問題ももちろん出てきますので、それをも凌駕して勝ち続けるナダル選手の凄さと言ったらもう他に例えようがありません。
これからも、そんな王者達のことにも注目しながら一人のテニスファンとして試合観戦を楽しみたいです。
いかがでしたでしょうか。今回の「J Magazine」も皆様に少しでも楽しでいただけていますと嬉しいです。
よくわからなかった方やもっと深堀りして聞きたい方は、是非またレッスンにお越しいただき、コーチへご質問いただけたらと思います。
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